青森県津軽地方にある鶴田町。
りんごや米などの農業が盛んな町ですが、もうひとつ、鶴田町を代表する農産物があります。
それが、黒葡萄の**「スチューベン」**です。
鶴田町は現在、スチューベンの一大産地として知られています。町の公式情報でも、スチューベンは作付面積・生産量ともに日本一と紹介されています。
では、なぜ青森県の鶴田町で、これほどスチューベン栽培が盛んになったのでしょうか。
そこには、津軽の気候だけでなく、地域で長年続けられてきた栽培と産地づくりの歴史があります。
今回は、青森県鶴田町で実際にスチューベンを栽培するスリーファームが、その背景を紹介します。
スチューベンとは?
スチューベンは、濃い紫色から黒色の果皮を持つ小粒の葡萄です。
特徴は、しっかりとした甘味と豊かな香り。
大粒で種がなく、皮ごと食べられる葡萄とはタイプが異なりますが、小さな一粒の中に凝縮されたような味わいがあります。
スチューベンという品種自体については、別の記事で味・糖度・旬・食べ方などを詳しく紹介しています。
鶴田町はスチューベンの一大産地
鶴田町は津軽平野の中央部に位置し、稲作やりんご栽培などが盛んな農業の町です。
その鶴田町を代表する果物のひとつがスチューベンです。
鶴田町によると、2025年のスチューベン栽培面積は98.9ha、販売数量は368tとなっています。
現在では「鶴田町といえばスチューベン」といえるほど地域を代表する農産物になっています。
しかし、もともと鶴田町がスチューベンの産地だったわけではありません。
鶴田町でぶどう栽培が広がった背景
鶴田町では、もともと水稲とりんごを主体とする農業経営が多く行われていました。
その中で農業経営を多角化するため、昭和40年代から転作田を活用したぶどう栽培の振興が進められました。
そこで生産が拡大していった品種のひとつが、スチューベンです。
高い糖度と長期貯蔵に向くという特徴もあり、地域で生産が広がり、やがて日本を代表する産地へと成長していきました。
つまり鶴田町のスチューベン産地は、気候条件だけで自然に生まれたものではありません。
地域の農家が栽培を続け、技術を蓄積し、産地として育ててきた歴史があります。
津軽の気候とスチューベン
スチューベンと津軽の相性を考えるうえで興味深いのが、そのルーツです。
スチューベンはアメリカ・ニューヨーク州で育成された品種で、日本には1952年に導入されたとされています。
青森県の観光情報では、津軽地方はスチューベン誕生の地であるニューヨークと緯度が近く、冬の積雪が葡萄樹を寒さから守ることも、栽培に適する要素として紹介されています。
ただし、私たちは「緯度が同じだからおいしくなる」という単純な話ではないと考えています。
実際の葡萄栽培では、その年の気温、降水量、日照、生育状況、病害、収穫時期など、さまざまな条件を見ながら管理する必要があります。
産地の気候と、そこで積み重ねられてきた栽培技術。
その両方があって、現在の鶴田町のスチューベンがあります。
秋に収穫して、冬にも楽しめる葡萄
スチューベンの特徴のひとつが、貯蔵性の高さです。
鶴田町では、この特徴を活かして「冬ぶどう」としてもスチューベンを販売しています。
収穫した葡萄を適切に冷蔵保存することで、秋に収穫された葡萄を冬にも楽しめます。
鶴田町ではスチューベンの販売時期を10月から2月と案内しており、一般的な「葡萄=夏から秋」というイメージとは少し違う楽しみ方ができます。
こうした長期貯蔵に向く特性も、鶴田町がスチューベンを地域の特産品として発展させるうえで重要な要素になりました。
「つるたスチューベン」はGIにも登録
鶴田町では、生産するだけでなく、地域ブランドとしてスチューベンの価値を高める取り組みも続けられてきました。
2014年には、生産者団体や販売団体による「つるたスチューベン日本一推進協議会」が設立。
そして2019年3月20日には、「つるたスチューベン」が国の地理的表示(GI)保護制度に登録されました。青森県によると、ぶどうの生果としては日本初のGI登録でした。
GIは、地域ならではの自然条件や伝統的な生産方法などと、商品の品質・特性との結びつきを保護する制度です。
スチューベンが単なる「ひとつの葡萄品種」ではなく、鶴田町という産地と結びついた農産物として育ってきたことを象徴する出来事でもあります。
スリーファームも鶴田町でスチューベンを栽培
スリーファームも、この青森県鶴田町でスチューベンを栽培しています。
私たちが栽培で大切にしているのは、単純に糖度の高い葡萄をつくることだけではありません。
葡萄の状態を見ながら、糖度だけでなく酸度の推移も確認し、収穫時期を判断します。
また、除草剤を使用せず草刈りで畑を管理し、芽かき、摘心、除葉など、ワイン用葡萄の栽培で培ってきた技術も取り入れながらスチューベンを育てています。
生果だけではない、スチューベンの可能性
鶴田町では、スチューベンは生果として販売されるだけではありません。
その濃厚な果実味を活かして、ジュースやワインなど、さまざまな加工品にも使われています。
スリーファームでも、生果としてスチューベンを届ける一方で、ぶどうジュースなどの商品づくりにも取り組んでいます。
生の葡萄を食べる。
ジュースとして飲む。
加工することで、新しい味わいを引き出す。
ひとつの品種でも、さまざまな楽しみ方があります。
鶴田町だからこそ、これからも伝えていきたい葡萄
スチューベンが鶴田町の特産品になった背景には、ひとつの理由だけがあるわけではありません。
津軽の気候。
スチューベンという品種の特性。
長期貯蔵できるという強み。
そして、長年栽培を続けてきた生産者と地域の取り組み。
それらが積み重なり、現在の産地がつくられてきました。
スリーファームも、その産地で葡萄を育てる生産者のひとつです。
これまで鶴田町で受け継がれてきたスチューベンを大切にしながら、生果だけでなくジュースなども通して、この葡萄の新しい楽しみ方を伝えていきたいと考えています。